? いたちなあたち・読書レビュー・墜落遺体
墜落遺体

文章力 ★★☆
構成力 ★★★
表現力 ★★★

引き込まれ度 ★★★
心に残る度 ★★★

読んだ月:2016年11月
この未曽有の飛行機事故を写した代表的な写真として、
体育館の中に白い布で包まれた棺が所狭しと整列した1枚がある。
数百の白い棺には、同じような花束が1つずつきちんと置かれている。

この1枚にどれほどの地獄が収められていたか、
この本を読むまで私は知らなかった。
棺の中にはご遺体が清らかに横たわっているのだと思っていた。

まさかそのほとんどの棺の中身が足の皮が1枚だけであったり、
右手だけだったり、内臓の一部だけであったり、
上あごだけといった部分遺体だとは思わなかった。

飛行機事故なのだから冷静に考えれば合点がいくのだが、
あまりにも整然と並べられた棺の写真は、
中身も形が整ったものだと言う
先入観を私に植え付けていたらしい。

飛行機事故は航空会社と遺族に焦点が当てられやすい。
マスコミも当時はこぞって両者を追いかけまわしたに違いない。
事故原因や事故の経緯ばかりが記事に書き立てられるが、
この本を読めばマスコミが追いかけられなかったドロドロとした
事故後の作業内容を知ることができるだろう。

季節は真夏。
マスコミの向けるカメラレンズを避けるために窓という窓を黒幕で覆い、
温度も湿度も人が耐えられる限界に近い状況といえる体育館内で、
腐敗していく遺体と数週間に渡り向き合い続けた人間たちがいた。

首から上だけの2歳くらいの女の子の顔
男性の頭部に別の男性の頭部がめり込んだ部分遺体
そんな部分遺体から本人特定につながる情報を
少しでも吸い上げようとする医師と
検視官
部分遺体に包帯を巻いて傷口を隠し、失われた箇所を綿で再現して
何とか遺族に見せられるように遺体を復元していく日赤の看護師達
そして生前の写真や歯科治療履歴を手に、
部分遺体が納められた棺を1つずつ開けながら家族を探す遺族たち
その遺族に世話役として1人ずつ付き、
猛烈な死臭が漂う体育館中を共に走り回った日本航空の職員達

知らなかった事実に驚愕する。

現場に居合わせ、最後まで仕事をやり遂げた人は
皆その後の人生が変わったに違いない。

お勧めしたい1冊である。